『良きドールとは、人が話している言葉の中から伝えたい本当の心をすくい上げるもの』ヴァイオレットエヴァーガーデン3話より
最近、相談を受けた後、何かしらモヤモヤとしていることが多い。
周りから見れば特に問題なく相談は進んでいるようにも見えていて、相手を傷つけているわけでも、問題が起きているわけでもない。
でも何か、違和感を感じている。調子が悪いという言葉で片づけていたが、そもそも調子とは何だろう。
実は去年の3月頃から、自分自身が月に1,2回ほどカウンセリングを受けるようにしている。
元々、カウンセラーとしてやっていくために、自分の特性や癖など自分と向き合う必要になった時期でもあったので、継続している。そこでは自己分析や教育分析、時には自分の相談に対してのSVなども守秘義務の範囲で受けている。先日がちょうど相談日だったので、今回は自分の相談についてを話し合った。
そこでの気づきとして大きかったのは、自分自身が以前より相手に対して興味が狭くなっている事。
その原因として考えられたのは、相談者の問題が深刻であればあるほど、自分自身も「何とかしてあげたい」気持ちが強くなること。そしてこれまでの成功体験が返って相手と関わりに関して阻害要因となっていた。
一つ目の問題の深刻に関しては、こちらから見て深刻だと感じるほどその問題をどうにか解決しなければという思考になる。ある人の話を借りれば、「シリアスにやられる」ともいわれる。
悩みによって、手を抜いているわけではないが、悩みの内容によって自分自身の受け止め方が違うことが現れてくる。これはある意味、人間である以上受け止め方の違いが出るのは仕方がないが、深刻に受け止めるほど、こちらは「困りごと」に焦点と興味を当てすぎてしまうことが挙げられた。
たとえば、今すぐに解決しなければ生活が維持できない、生命に関わるといった悩みだと、すぐに困り事を中心に質問が集中する。それ自体は悪いことではない。
しかし、少し視点を変えてみると、そもそも目の前の人は「悩みのみ」で生きているのだろうか。
仮に「生きていくことが嫌になった」といった相談があったとしても、嫌に「なった」ということは今はそうでも、以前は違うことが考えられる。しかしこの時に嫌になった理由や今のしんどさを聞いてばかりでは、相談者の困りごとには詳しくなれても、『相談者自身』を知るとは言えない。
目の前の人はこれまでどのように生きてきて、何が好きなのか、逆に何が嫌いなのか、人を知るにはいくらでも質問があっても尽きることはない。
相談者自身の言葉「生きていくことが嫌になった」にはどのような背景があり、思いが込められているのか、それは今の困り事だけを聞くだけでは見えてこない。改めて考えてみる必要がある。
ここで、個人的には人と関わる方にぜひ見て欲しいアニメ
ヴァイオレットエヴァーガーデンからの言葉をお伝えしたい。
自分自身もこの話を自分で考えていた時にこのシーンが思い浮かんだからである。
この世界では文字を書けない人も多く、その人の代わりに手紙を代筆するドールという職業が存在する。主人公のヴァイオレットはドールになるべく、養成学校に通う。タイプライターのタイピング速度や聞き取りの正確性は他の生徒に比べても群を抜いていた。しかし、ヴァイオレットは合格することが出来なかった。そんなヴァイオレットを見かねて、一緒に授業を受けていたクラスメイトのルクリアはヴァイオレットにとって大切な人に手紙を書こうと誘う。しかしヴァイオレットはどのように伝えればいいか分からなかった。そんな中ルクリアは自分の身の上話をする。両親は戦争で亡くなったが、兄は無事に戦争から帰ってきた。しかし兄は自分が戦争で国を守れなかったことを悔やみ、両親が亡くなったのは自分のせいだと思い込み、酒におぼれていた。
そんな兄に対して、ルクリアは
「本当は兄が生きててくれるだけで嬉しい」
「ありがとうを伝えたいだけなのに」
しかし、何度も伝えようとしてもどうしても伝えられないと涙ながらに語る。
彼女の涙をみたヴァイオレットはルクリアに一緒に手紙を書くことを提案する。
そしてヴァイオレットが代筆した手紙には
「お兄ちゃん、生きていてくれてありがとう。嬉しいよ」
と短いながらも、ルクリアの想いが込められたメッセージだった。
後日、ルクリアの手紙を読んだ先生はヴァイオレットを呼び出し、彼女に合格を告げる。
その時に教官が言った言葉
「良きドールとは、人が話している言葉の中から伝えたい本当の心をすくい上げるもの」
ヴァイオレットはルクリアの伝えたかった心をすくい上げ、ドールとしての一歩目を進めるのだった。
この話から、言葉には心が込められているが、そのまま心が言葉として表現されるとは限らない。むしろほとんどないとも言ってもいい。ルクリアの場合は伝えられない背景に彼女の兄に対しての複雑な思いが絡み合ったようにも思える。もしそのまま「伝えましょう」とだけになったらどうだろうか。ルクリアの伝えられない想いはないがしろになった可能性が高い。逆に彼女の複雑な思いだけを尊重すると、伝えたい言葉はいつまでもすくい上げられない。複雑な思いと伝えたい言葉、その両方をくみ取ったからこそ、兄にもルクリアにも響いたメッセージに変わったともいえる。
語った言葉にはたくさんの想いが詰まっており、その中にはこれまでの本人の生き様や背景もある。
「言葉」は以心伝心とは違う。
さきほどの例でも「嫌になった」の『嫌』にはどんな思いがこめられているのだろうか、「生きていく」の中にこの人にとって『生きる』は何を意味しているのだろうか。
そしてその言葉を伝えようとした【意図】はなんだったのだろうか。
言葉は人によって意味が変わってくるものでもある。
以前、意図のない質問は無責任と書いたブログもあるが、相手の意図をくみ取ろうとしないことや、相手をいろんな角度から知ろうとしないこともまた、話を聴くということにおいて、無責任なのだろう。
どのような相談であれ、相手の事を知ろうとする努力は、常に意識する必要があると自戒を込めて残しておく。
もう一つの問題、成功体験が関わりにおいて阻害要因になることはまた次回にお話しします。
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