『世界中にたった一人、一人だけでも自分を信じてくれる人間がいれば救われる…』

学びの中で得たもので、今回は思考の土台(スキーマ)についての話。
人は家族や学校、職場などのコミュニティや、国や地域といった社会の影響を受けやすい。
特に、幼少期などの子ども時代はまだ自分自身の力は弱く、何かに頼ったり依存しなければならないことも多い、
それゆえに子ども時代の家族、友人、学校、地域コミュニティなどの社会の影響は自分の中で大きく存在しており、大人になってもその影響が気づかないうちに出てしまう事もある。
たとえば、子どもの頃に泥団子を一生懸命に頑張って作ったことがあったりする。泥団子を何度も何度も試行錯誤して、自分にとっては満足のいく作品にまでなった。そこで認めてもらおうと親に見せた時、否定されたらどうだろう。親からみれば泥団子自体にそこまで価値を感じず、また作り直せると思った、その時はイライラしていた。など親にも理由があるかもしれない。しかし子どもからすれば、頑張ることは否定されることと、大きく思うかもしれない。こんなことが続いたらどうだろう。中にはそんな些細なことで、と思う事もあるかもしれない。しかし一つ一つの細かい傷が最後には自信の喪失となり、どこかで頑張ってもなぜだか分からないが、何か否定されるような気がするといった思考が出てくる。
このよく分からないが出てくる思考がスキーマであり、このスキーマが土台となってしまう。

このスキーマの厄介なところは一つ一つの傷が細か過ぎて、いちいち覚えていない。だから何が原因と言われても漠然とよく分からないとしか言いようがないことも多いのだ。
たまにこの「よく分からない」をはっきりさせようとする人もいるが、ほとんど傷つくまたは傷つける、もやもやだけで終わることが多い。覚えていないことをはっきりとさせるのは不可能なのだから。なのでとりあえず「よく分からない」をまず受け止める方が大切である。

では受け止めた後はどうすればいいのか、ここでは土台となっている思考、つまり今回の場合は自信の喪失があるということは、逆に言えば何が望みなのかを考えてみる。

ここでハンターハンターという漫画の話をする。

この話は主人公ゴンが一流ハンターである父親ジンを探す物語だが、その途中でグリードアイランドというゲーム内で、ジンの仲間レイザーと戦うことになる。戦いに勝利した後、レイザーは父親のジンと自分について昔話を教えてくれる。

レイザー自身の子ども時代は貧困家庭で、親から名前も呼ばれず虐待を受けた環境で育つ。そして多くの人間を殺めて死刑囚となったところ、ジンに雇われて、一緒にゲームを作ることになった。そしてそのゲームが完成した時、
「俺の息子がいつかこのゲームにきたら遠慮しねーでぶっとばせ」と言われ、「殺してもいいってことかよ?」と尋ねたら

「なめんなよ、俺の息子だぜ」
「それじゃ頼んだぜ、レイザー」

死刑囚に自分の息子を託すなんて、イカレていると思う反面、自由にやりたいことをしているジンがうらやましかった。
そして「頼んだぜ、レイザー」と肩に手を掴まれた時

『生まれて始めて、自分の名前を呼んでもらえた気がしたよ』

そんなジンが俺を信じてくれたように、俺もお前の力を信じた。

レイザーはジンとの過程の中で
『世界中にたった一人、一人だけでも自分を信じてくれる人間がいれば救われる…』
そのことを息子のゴンに伝えたのだった。

この話から、レイザーは悲惨な子ども時代に数えきれないほどの傷を抱えてきた。それゆえに犯罪に手を染めて、死刑囚になるほどにまで、罪を重ねた。しかしジンとの関りで彼は「生まれて初めて名前を呼ばれた気がした」と実感する。名前を呼ばれるなんて当たり前のこと、そう思うかもしれないが、当たり前が叶わないことが苦しく、そして理解されないこともまた苦しい。死刑囚にまでなった彼の望みは単純に名前で呼ばれることだったのかもしれない。
そしてもう一つ、自分を信じてくれる存在がいる。彼は望みが叶った時、死刑囚だった時とは違った土台(スキーマ)になっただろう。

ここで先ほどの話に戻る。幼いころからの小さな傷を抱えた自信の喪失が土台(スキーマ)の大人はどうすればいいか。
彼の望みは何なのか。単純に考えれば、褒められたかった。もっといえば、泥団子を作ったことを褒められたかった。すごいねと言ってほしかった。泥団子を作った場面に戻って褒めてあげたら、どうなるだろうか。
土台(スキーマ)を作り変えるには場面に戻ることも大事である。褒められた子どもから今の大人に戻った時に、記憶が再構成されるからである。

人の望みは単純だが難しい。
自分を苦しめているもの【土台(スキーマ)】とは何かを考えてみると同時に、何が望みだったのか、思い出した場面があればなにをしてほしかったのか、一度振り返ってみてもいいかもしれない。

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